"With The Beatles”
物心ついてからこのかた2回、万引きするんじゃ? と、明らかに、凝視する店員さんと、目が合ったことがある。
15才(1966年)の7月初旬の事、白生地の半袖開襟シャツに学生帽をきっちり被り、念願のビートルズのLP(アルバム)レコードを買おうと心躍って、思案橋の電車通り、鍛冶屋町アーケード入口から右手に少し離れたレコード店を訪れた。
買うものは決めていたが、ここに来て物珍しくて、シングルレコードコーナーとLPコーナーを行ったり来たりして、しばらく決めかねていた。
ふと、女子店員と目が合った。なんか変。明らかにこっちを監視しているぞ、と顔に書いてあった。
急ぎ、決心した私は貰ったばかりのボーナス袋(*)から、真新しい一万円札を抜き取り、”With The Beatles”を陳列ケースから手に取りると、その店員に歩み寄り、レコードの上に一万円札を乗せ、どうだ、とばかりに差し出した。
二度と来るかー! と思ったが...その後もちょくちょく、
利用してやったぜぇ。慈悲深い、だろー?
(*)注訳 ボーナス袋には1万6千円入っていた。学習手当という名目での給与貰っていた。ちなみに、五月の初任給は手取り7千2百円だった。四月に入学して、七月の初旬にはボーナス貰ってた。ごっつあんです。
2022.1.25記