父親と観ていた東映時代劇映画の絶頂期
東映映画の黄金期の大川橋蔵を、父親に連れられ、小学校入る前から私は度々観ていました。この映画は東映が昨年12月に無料でウェブ公開していたのを、懐かしくて、有難く拝視聴致しました。
物語は大みそかの夜、正月の松飾りの場面から始まります。今見ても、大川橋蔵の若さま役がピタリとはまっています。チャンバラ殺陣(たて)も上手い。きらびやかな衣装と、きゃぴきゃぴの桜町弘子や三田佳子らの美しい若き映像も楽しめます。三田佳子って、すごい美人やったんですねー。
長崎市民病院裏通り斜め向いに、洋画専門の『 新世界 』と隣接するかのように東映専門の映画館が、かつてはありました。私は父親に連れられて、チャンバラ映画を観るために通っていました。内容は理解できなくて、歌と踊り以外は居眠りしていた私がチャンバラが始まると目を輝かせて、スクリーンを眺めていました。いつも観劇は夜の部が多かった。終わりは十時過ぎで、最終バスは既に無く、通りの店舗はすべて閉まっていました。当時はコンビニがあるわけでもなく、時々通る車のヘッドライト以外、灯りは家並みから漏れる明かりか、電柱の白熱電球が照らすのみでした。自宅がある大浦川上町までの夜の道のりは寝ぼけた小学低学年の足には辛かった。でも、父親に背負ってもらって帰っていたことを覚えています。
当時は東映時代劇映画の絶頂期。正月休みの娯楽の王様が映画だった頃、映画館は満員で立ち見の客でごった返していた。豪華二本立て、客は入れ替え無しが当たり前でした。娯楽時代劇の定番が『 清水次郎長 』や『 赤穂浪士の討ち入り 』の物語のチャンバラ映劇は、東映専属の人気俳優総出演で、フイルムはモノクロがまだ普通だった昭和30年代、総天然色と銘打って、豪華絢爛さをアピールしていました。
しかしながら、この頃が映画界全体の集客はピークだったようで、世の中がテレビに傾斜して行くに従い、私が中学生の頃は東映は時代劇からヤクザものの路線一辺倒になり、娯楽チャンバラ時代劇は姿を消してしまった。それまでは映画俳優とテレビ俳優は毅然と一線が引かれていたが、時代劇の大御所と言われる俳優らさえ、活躍の場を求めて、テレビ界へ移って行きました。
大川橋蔵はテレビ界でも成功をおさめました。『 銭形平次 』の主演レギュラー作品で有名ですよね。
55歳でお亡くなりになって、38年経っていますが、橋蔵31歳の若き映像はいつまでも総天然色で生き続けています。
2023.1.9記