出会いは喫茶店・”課長・島耕作”
喫茶店経営が脱サラオーナーの夢だった頃。喫茶店は隆盛していた。店内の雑誌コーナーには景気のいい店ほど、幾種類もの最新号の週刊誌が並んでいた。
時事もの、芸能もの、ゴシップもの、女性誌それに漫画が、揃っていた。漫画は週刊サンデー、週刊マガジン、週刊ジャンプ...等々。
近年の受動喫煙対策などは勿論無く、席に着くと、必ず灰皿とコップのお冷が「いらっしゃい」の挨拶と共に、目の前のカウンターに置かれた。
営業職と思われる身なりの男等が常連客となり、平日の午前中から、タバコ吸いながら、時々、コーヒーをすすり飲みして、ひたすら漫画を読んでいた。
いい大人が漫画をと、偏見の眼をして眺めていたのだが、すぐに迎合してしまった。
32,3歳の頃(1983年頃)の細やかな楽しみは休日、長崎市大波止にあった馴染みの喫茶店での週刊誌読破だった。漫画ものは好みのものだけが、対象だった。
暇に任せて、長居して、すみません。これでご勘弁を(口には出さないけど)。コーヒーをおかわりして、がつがつ、読みまくった。
漫画は絵がきれいで、リアリティーが有り、社会情勢と恋愛がラップして、物語が展開するようなのが、好みだった。好みの漫画を読み漁っている内に、翌週号を心待ちするようになっていたのが、”週刊モーニング”で、連載中の”課長・島耕作”との出会いだった。
この喫茶店が徐々に経営が芳しくないのでは、と思うようになったのは、雑誌コーナーの週刊誌の数が減少していると気づいた頃です。これを境にか、次第に足が遠のき始め、”課長・島耕作”もすっかり忘れて終っていた。
それから幾年月、サダオの古希がすぐそこまで来ていたある日、発見してしまった。ヤフーオークションで”課長・島耕作”の中古の単行本が出品されていた。なんと、”課長・島耕作”が出世していた。知らなんだ。
”次長・島耕作”、”部長・島耕作”、”取締役・島耕作”、”常務・島耕作”、”専務・島耕作”。とうとうやって来ました、”社長・島耕作”。そして、若かりし頃の”係長・島耕作”、”学生・島耕作”。こんな世代の島耕作が居たなんて、ミラクル!
すべて、大人買いした...
昼夜を問わず、無心に漫画を読みふけった古希爺さんは、どこにいた? ここにいた。
それが...何か?
2022.4.10記