アナグマの食事マナー
アナグマがさつまいも畑で芋掘り出して、食っていた。状況証拠ですぐ解る。
盗人にも食事マナーってものがあるらしい。芋をかつがつ掘り起こして、ちょっと食って、ポイ。ちょっと食って、ポイ。では芋の被害が多くなる。
ネズミは土の中で、かつがつ食い荒らし、ひとかじりで、次の芋、次の芋と性根が悪い。土の中だけでは発見しにくい。
アナグマは犯行現場で食事をする。芋掘り出しひと齧りしたら、皮を残して中身だけ食べる。その場で皮を捨てるので、芋皮が小さな束になっている。
芋一つを几帳面に食べるらしく、被害にあうのは一度に1こ、2こ止まり。畜生にしては食べ方が、きれいだ。
ところで、人によってはさつまいも苗を植え付けしたら、水の心配は要らない。と言うが、私は普段でも古いバスタブに貯めこんだ雨水を散水していた。
日照り気味の時は、貯水では追いつかないので、近くの沢からホースを長々と延ばし、小型のエンジンポンプを動かして、汲み上げていた。
そのホースから勢い良く、生い茂った芋の茎、葉っぱの上へ、ドバドバと水を掛けていた。
その日は暑い夏の日だった。芋畑が日照り気味だったので。前述のごとく、何時ものように、生い茂った芋の茎、葉っぱの上へ、ホースからドバドバと水を掛けていた。
ふと、芋の葉が何か居るかのように動いた。
芋の葉に隠れるように猫がいた。と、思った。近所のドラ猫が芋の葉の日陰で昼寝してたかと思った。
寝ぼけた顔で目が合った。うん? 顔が、面相が、猫じゃねぇ〜。鼻が長く、しゃくれてるぅ〜。てめぇ〜、猫じゃねぇ〜なぁ〜? そうだ、こいつが、アナグマだぁ!
叩き出しってやる! この野郎〜、と、近くに棒は無いかと、ウロチョロしたすきに、奴は侵入口と思われる穴から、逃げ出した。
逃げられた、と思ったら、奴がこけていた。柵の網の目に、奴の後ろ左足の爪が引っ掛かって動けずにいた。
恨めしそうな、いや、憐れみを哀願するような、いや、観念した畜生の、泰然とした面構えがそこには有った...崇高なり...
アナグマに武士道を見つけたり!(何のこっちゃ、妄想が過ぎる。ヤバイ...)
奴のやさしそうな顔が思い浮かぶ...ナムアミダブツ...
2022.4.16記