怪談・私は見たーポリバケツの中の蠢き
10年程前の話になります。畑の傍らで牛糞と鶏糞の混合肥料を、蓋付きの大型ポリバケツに溜めていた時の事です。
ある日、しばらくの間、その蓋を開けたままの状態にしていたことがあった。後々気がついたが、その日は畑作業中にいつになく銀バエを見かけていた。
過日、畑に出て、その蓋を開けると、驚愕した。蠢(うごめ)いていた・・・もう一度言う。蠢いていた。それも…仰山、いっぱいです。眼を見開いて、すぐさま蓋をした。見てはいけない怖い物を見たような気がした。
ウジ虫は幼少の頃、夏休み遊びに行っていた母の生家の、牛小屋に隣接する廁と五右衛門風呂では良く出くわせていた。気色悪いが程度は、ゴキブリほどではない。
すぐ対策を練った。以前から考えていた殺虫方法を実践することにした。薬局から過酸化水素水(30%)を購入してきた。因みにこれを3%に希釈したのが傷口に使う消毒液のオキシドール。
容器の半分くらいを満遍なく振り掛けると、かすかにジュジュと音を発するかのように、白い小さな泡が瞬く間にポリバケツ内に広がった。空気が漏れないよう急ぎ、蓋を確実に閉めて、その上からビニールシートをゴムバンドでくくり付けた。
過酸化水素水は空気の酸素と反応し水が残るのみなので、残留農薬の問題は発生しない。害虫細菌は酸素が欠乏して、駆除される。
翌日確認すると、彼らはものの見事に駆逐されていた。次の追肥時にポリバケツの中を観察すると、牛糞鶏糞の発酵作用からなのか、彼等は跡形もなく姿を消していた。肥料の一部になったのでしょう。
真夏の夜の怪談話よりは、本当の話だけに、思い出せば気色悪いのだ。ジャンジャン!
2023.8.6記