センダンの巨樹は中学校跡地の路傍で、その歴史を静かに語りはじめた…
遠くから見ると、その大きな樹の枝先にたくさんの白い果実が付いている。ナンキンハゼかと思っていたら、近寄ってみると道路上にも、たくさんのナンキンハゼの小さな実ではなく、より大きな果実が散らばっていた。何の実だろうと、帰宅して調べてみると、それは栴檀だった。
驚いたことに、この樹は車が行き交う車道上に立っていた。その巨体の根はアスファルトを押し上げ、幹には「土井首中学校第3回卒業生記念樹」と書かれた看板が取り付けられている。
この樹がここにある理由は何だろうか? 実はこの土地は、旧土井首中学校の跡地でした。1951年(昭和26年)から1969年(昭和44年)までは木造校舎の学校でしたが、江川町の現在地にある鉄筋コンクリート造4階建ての新校舎が、完成したのを待って移転しました。
長崎市平瀬町に存在していた旧土井首中学校の歴史を静かに伝えている栴檀の巨樹に対し、末永く生き延びて欲しいと祈念し、エールを送ろうと思う。
その翌日。昨日と同じ場所で、その木の実を拾っていたとき、年配の女性に声を掛けられた。「銀杏(いちょう)のギンナンですか?」、「ギンナンは買えば高い」、「食べられるの?」。彼女の アクセントが地元とは違っていたので、尋ねてみると、 彼女は広島から長崎に来て2年がたったと言う。「それは イチョウではなくて、センダンの木です。実には毒があって、鳥は食べますが、人間が食べると下痢をするので、食べられないですよ」と、昨日知ったばかりの知識を披露した。
P.S.
ちなみに、センダンの木は近年、家具づくりの材料として注目され、長崎でもセンダンを材料に家具を製作しているところがあります。西海市大瀬戸町雪浦幸物郷の「センダンの森」ではセンダンを植樹し、モデル林として未来を見据え、育てています。
また、熊本県ではセンダンの育成研究が進み、スギヒノキに代わる生産木材としても、有望視されています。センダンは成長が早く、欅のような木目が美しいのが特徴です。ヒノキ、スギは木材製品として成長するのに40から50年程掛かるが、センダンは15〜20年で伐採収穫できる大きさになるそうです。
2023.1.21記
土井首中学校(平瀬町・昭和33年) 資料:『ふるさと長崎市』p.183より